
トムソンの実験や磁場偏向の実験によって、電子の質量と電荷の比である比電荷を求めることができます。今回は、これらの実験をアニメーションで見てみましょう!
電子 |
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この2つの実験でしていることは大まかには同じです。
まず、左から電子を発射します。その後、トムソンの実験では電場で、磁場偏向では磁場を用いて電子に力を与え、軌道を曲げていきます。そして、最終的に電子がたどり着いたスクリーン上の位置を計測するといった流れです。
この計測結果から電子の比電荷を導くことができます!ではそれぞれの実験を1つずつ見ていきましょう!
トムソンの実験では、電場を用いて電子に力を与えていきます。電位の違う金属板を用意すると、その間に一様電場が生まれます。この間に電子を通すという流れです。
濃い緑は金属板、薄い緑は電場が生じている箇所を表しています。コンデンサーをイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。
電子は電場によって力を受けていきます。電子の電荷の符号は負なので、電場と逆向きに力を受けます。
ただし、電子に働く重力の大きさは非常に小さいので無視します。
このとき、力の向きは常に下向きなので、鉛直下方向を正とすると、運動方程式は
となります。ただし、電子の質量を 、電子の電荷を 、下向きの加速度を 、電場の大きさを としました。
これより、
となります。つまり、電子は等加速度運動をするわけです。これは重力を下向きに受けているのと全く同じ状況なので、電子は放物線を描いて運動していきます。
電場ゾーンを抜けると、そこからは力を受けません。電子は等速度直線運動をしてスクリーンに到達します。
電場ゾーンの距離を 、初速度を とすると、電子が電場ゾーンにおいて鉛直方向に進む距離は
です。その後の力を受けない区間で鉛直方向に進む距離は、電子の鉛直方向の速度が であることから、
です。ただし、この区間の距離を としました。
よって到達するスクリーンの位置 は、これらを足して、
です。これを変形すると、
となり、比電荷 を計測結果から求めることができました!
磁場偏向の実験では、磁場を用いて電子の軌道を曲げていきます。以下のように、磁場がかかっている区間を作り、そこに電子を照射します。
電子は磁場からローレンツ力を受けます。先ほどと大きく違う点として、ローレンツ力の向きは電子の運動する向きと垂直です。電子はローレンツ力によって円運動を行い、その速さは一定です。
よって中心方向の運動方程式より、
が成立します。ただし、 はこの円運動の半径です。ここで、以下のように角 を定めます。
すると図より、
が成立します。スクリーンの到達位置を とすると、
となります。 であると仮定すると、 なので、
と近似することができます。これを用いると、
となります。これを変形すると、
となり、比電荷 を計測結果から求めることができました!
電子の質量や電荷はとても小さい値であり、測定することが難しいです。しかし、これらの実験によって電子の比電荷 を求めることができます。
20世紀になって、ミリカンは油滴を用いた実験によって電気素量 を求めることに成功します。これとすでに求められていた比電荷の値を用いることで、電子の質量 も求めることができたのです。