トムソンの実験と磁場偏向をアニメーションで見よう
masstocharge
作成日:2025/3/25

トムソンの実験や磁場偏向の実験によって、電子の質量と電荷の比である比電荷を求めることができます。今回は、これらの実験をアニメーションで見てみましょう!

アニメーション

電子

実験の概要

この2つの実験でしていることは大まかには同じです。

まず、左から電子を発射します。その後、トムソンの実験では電場で、磁場偏向では磁場を用いて電子に力を与え、軌道を曲げていきます。そして、最終的に電子がたどり着いたスクリーン上の位置を計測するといった流れです。

この計測結果から電子の比電荷を導くことができます!ではそれぞれの実験を1つずつ見ていきましょう!

トムソンの実験

トムソンの実験では、電場を用いて電子に力を与えていきます。電位の違う金属板を用意すると、その間に一様電場が生まれます。この間に電子を通すという流れです。

濃い緑は金属板、薄い緑は電場が生じている箇所を表しています。コンデンサーをイメージしてもらえるとわかりやすいと思います。

電子は電場によって力を受けていきます。電子の電荷の符号は負なので、電場と逆向きに力を受けます。

ただし、電子に働く重力の大きさは非常に小さいので無視します。

このとき、力の向きは常に下向きなので、鉛直下方向を正とすると、運動方程式は

ma=eEma=eE

となります。ただし、電子の質量を mm 、電子の電荷を e-e 、下向きの加速度を aa 、電場の大きさを EE としました。

これより、

a=eEma=\frac{eE}{m}

となります。つまり、電子は等加速度運動をするわけです。これは重力を下向きに受けているのと全く同じ状況なので、電子は放物線を描いて運動していきます。

電場ゾーンを抜けると、そこからは力を受けません。電子は等速度直線運動をしてスクリーンに到達します。

電場ゾーンの距離を ll 、初速度を v0v_0 とすると、電子が電場ゾーンにおいて鉛直方向に進む距離は

12at2=12eEm(lv0)2=eEl22mv02\frac12at^2=\frac12\frac{eE}{m}\left(\frac l{v_0}\right)^2=\frac{eEl^2}{2mv_0^2}

です。その後の力を受けない区間で鉛直方向に進む距離は、電子の鉛直方向の速度が at=eEmlv0at=\dfrac{eE}{m}\dfrac l{v_0} であることから、

eElmv0Lv0=eElLmv02\frac{eEl}{mv_0}\cdot \frac{L}{v_0}=\frac{eElL}{mv_0^2}

です。ただし、この区間の距離を LL としました。

よって到達するスクリーンの位置 y0y_0 は、これらを足して、

y0=eEl22mv02+eElLmv02=eEl(l+2L)2mv02y_0=\frac{eEl^2}{2mv_0^2}+\frac{eElL}{mv_0^2}=\frac{eEl(l+2L)}{2mv_0^2}

です。これを変形すると、

em=2v02y0El(l+2L)\frac em=\frac{2v_0^2y_0}{El(l+2L)}

となり、比電荷 e/me/m を計測結果から求めることができました!

磁場偏向の実験

磁場偏向の実験では、磁場を用いて電子の軌道を曲げていきます。以下のように、磁場がかかっている区間を作り、そこに電子を照射します。

電子は磁場からローレンツ力を受けます。先ほどと大きく違う点として、ローレンツ力の向きは電子の運動する向きと垂直です。電子はローレンツ力によって円運動を行い、その速さは一定です。

よって中心方向の運動方程式より、

mv02r=ev0B r=mv0eBm\frac{v_0^2}{r}=ev_0B\quad\therefore\ r=\frac{mv_0}{eB}

が成立します。ただし、rr はこの円運動の半径です。ここで、以下のように角 θ\theta を定めます。

すると図より、

sinθ=lr\sin\theta=\frac lr

が成立します。スクリーンの到達位置を y0y_0 とすると、

y0=r(1cosθ)+Ltanθy_0=r(1-\cos\theta)+L\tan\theta

となります。rlr\gg l であると仮定すると、θ1\theta\ll 1 なので、

sinθtanθ, cosθ1\sin\theta\fallingdotseq \tan\theta,\ \cos\theta\fallingdotseq 1

と近似することができます。これを用いると、

y0r(11)+Lsinθ=Llr=eBlLmv0y_0\fallingdotseq r(1-1)+L\sin\theta=L\frac lr=\frac{eBlL}{mv_0}

となります。これを変形すると、

em=v0y0BlL\frac em=\frac{v_0y_0}{BlL}

となり、比電荷 e/me/m を計測結果から求めることができました!

比電荷の意義

電子の質量や電荷はとても小さい値であり、測定することが難しいです。しかし、これらの実験によって電子の比電荷 e/me/m を求めることができます。

20世紀になって、ミリカンは油滴を用いた実験によって電気素量 ee を求めることに成功します。これとすでに求められていた比電荷の値を用いることで、電子の質量 mm も求めることができたのです。

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